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お笑い世代論

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お笑い世代論(おわらいせだいろん)とは、日本のお笑い芸人を登場時期、活動媒体、芸風、価値観、メディア環境などに基づいて「第一世代」「第二世代」「第三世代」などに区分して論じる見方である。特に2010年代末以降、「お笑い第七世代」という語が広く流通したことで、それ以前の芸人についても世代ごとに整理して語られることが増えた[1]

概要

お笑い世代論は厳密な学術分類ではなく、評論家、メディア、ファンのあいだで用いられる便宜的な分類である。ラリー遠田の著書『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』は、この見方を体系的に整理した代表例として挙げられる[2]。一方で、世代区分や代表芸人の選び方については論者によって違いがあり、定説があるわけではない[1]

背景

ラリー遠田は、第一世代以降の芸人を論じるうえで「テレビ」の存在が不可欠であるとし、1953年の地上波テレビ本放送開始以後、芸人の主戦場がテレビへ広がり、「売れる」ことがテレビ出演と強く結びつくようになったと述べている[1]。そのため、お笑い世代論は単なる年齢区分ではなく、テレビ、賞レース、劇場、ラジオ、YouTube、SNS、配信などのメディア環境の変化を反映した見方として用いられる。

主な世代区分

第一世代

テレビ芸の基礎を作った世代として位置づけられる。ラリー遠田の整理では、いかりや長介と萩本欽一が代表的存在として扱われている[2][1]

第二世代

漫才ブームとテレビバラエティの本格化を担った世代とされる。代表例として、ビートたけし、明石家さんま、タモリらが挙げられることが多い[2]

第三世代

1980年代後半から1990年代初頭に台頭した世代。一般には、とんねるず、ダウンタウン、ウッチャンナンチャンらを中心に語られる。バラエティ史を扱ったQJWebの記事では、1989年の『オレたちひょうきん族』終了後、とんねるず、ダウンタウン、ウッチャンナンチャンらがテレビの笑いの中心に躍り出たと説明されている[3]

第四世代

1990年代の若手芸人ブームと関連づけられる世代。『タモリのボキャブラ天国』や『めちゃ×2イケてるッ!』の系譜とともに論じられることが多い。QJWebは『ボキャブラ天国』について、「若手芸人」という概念を世間に広め、爆笑問題やネプチューンらの台頭につながったと整理している[3]

第五世代

2000年代の賞レース時代に台頭した世代として語られる。2001年に『M-1グランプリ』が始まり、初代王者は中川家、参加組数は1603組だった[4]。また、2002年には『R-1グランプリ』が始まり、初代優勝者はだいたひかるだった[5]。さらに2008年にはコントに特化した賞レースである『キングオブコント』が始まり、公式アーカイブでは初代キングがバッファロー吾郎とされている[6]。この時期以後、お笑いはテレビ番組で発見されるだけでなく、賞レースで実力を示して売れる構造を強めた。

第六世代

2000年代後半から2010年代前半のネタ番組、賞レース、ひな壇バラエティで活躍した世代とされる。ラリー遠田はこの世代を「テレビへの憧れと挫折」と整理している[2]

第七世代

霜降り明星、EXIT、ハナコ、宮下草薙、四千頭身、かが屋、ぺこぱなどを含む若手芸人群を指す呼称として広まった。霜降り明星・せいやは、自身が「第七世代」の言い出しっぺとして扱われる一方で、「“お笑い”第七世代」とは言っていないと説明している[7]。このため、第七世代という語は、芸人本人の自己規定というよりもメディア側のラベリングとして扱われることが多い。

第七世代以後

2020年代以降は、「第八世代」という呼称が一部で使われることもあるが、「第七世代」ほど一般化しているとは言いがたい。代わって、大学お笑い出身者の台頭、賞レースの高度化、YouTubeやPodcast、配信ライブの常態化などが注目されている。

東洋経済オンラインは、『M-1グランプリ2023』について、優勝した令和ロマンの髙比良くるまと松井ケムリが慶應義塾大学のお笑いサークル出身であり、真空ジェシカの川北茂澄も同じサークル、相方のガクは青山学院大学のサークル出身であると報じている[8]。同記事は、ママタルト、さすらいラビー、ひつじねいり、Gパンパンダなども学生芸人文化や大学サークルの文脈から説明している[8]

また、ABCラジオのリリースでは、ラランド真空ジェシカ令和ロマンなどを『大学お笑い』が輩出した代表例として紹介している[9]。こうした流れのなかで、NOROSHIのような学生大会、大学サークル、ライブシーン、配信番組が、プロ前夜の芸人を可視化する回路として重要性を増している。

一方、賞レースの側でも変化が見られる。東洋経済オンラインは、大学お笑い出身者が『R-1グランプリ』や『キングオブコント』でも存在感を高めていると報じている[8]。コント分野では、賞レースの制度化によって、ユニットコントや構成重視のグループも評価対象として可視化されやすくなり、ダウ90000のように演劇・コント・ユニット性を横断する表現も注目されるようになった。

M-1グランプリ』では令和ロマンが2023年と2024年に連覇し、2025年にはたくろうが優勝した[4]。このため、2020年代以後の若手芸人は、「第八世代」と一括するよりも、大学お笑い、賞レース最適化、配信時代の活動形態といった複数の軸から説明されることが多い。

批判・限界

お笑い世代論には、世代の境界が曖昧であること、関東と関西で芸人の売れ方が異なること、テレビ中心の整理では劇場・ラジオ・大学お笑い・インターネット配信などの動向を捉えにくいことなどの限界がある[1]。とりわけ2020年代以降は、テレビ出演の有無だけでは芸人の影響力を測りにくくなっており、従来の世代区分では説明しきれない面も指摘されている。

関連項目

脚注

  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 (2021-04-14)第七世代が話題の今、ラリー遠田が提示するお笑い芸人の新しい「世代区分」, 光文社新書, 参照日: 2026-05-02.
  2. 2.0 2.1 2.2 2.3 お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで, ラリー遠田, 参照日: 2026-05-02.
  3. 3.0 3.1 バラエティの30年史から、2020年代の「テレビの笑い」を考える〖前編〗, QJWeb, 参照日: 2026-05-02.
  4. 4.0 4.1 大会の歴史, M-1グランプリ 公式サイト, 参照日: 2026-05-02.
  5. R-1グランプリ2026 大会の歴史, R-1グランプリ公式サイト, 参照日: 2026-05-02.
  6. キングオブコント2008公式サイト, キングオブコント公式サイト, 参照日: 2026-05-02.
  7. (2023-07-27)霜降り明星・せいや「僕は“お笑い第七世代”とは言ってないですけどね」と念押し, ニッポン放送 NEWS ONLINE, 参照日: 2026-05-02.
  8. 8.0 8.1 8.2 (2024-01-25)令和ロマンで話題「大学お笑い」勢いを増す背景 R-1やキングオブコントでも存在感が高まる, 東洋経済オンライン, 参照日: 2026-05-02.
  9. (2024-01-18)ABCラジオに学生芸人がやってきた!現役学生芸人がおくる「大学お笑いラジオ部」, 朝日放送ラジオ, 参照日: 2026-05-02.