大学お笑い
大学お笑い(だいがくおわらい)は、大学の落語研究会、寄席演芸研究会、喜劇研究会、お笑いサークルなどを母体として行われる学生によるお笑い活動の総称。漫才、コント、ピン芸、大喜利、落語、ライブ制作、学園祭出演、大会出場などを含む。
広義には、明治大学落語研究会、早稲田大学寄席演芸研究会、同志社大学喜劇研究会、大阪芸術大学落語研究会など大学内の演芸・喜劇系団体の活動全般を指し、狭義には、2010年代以降に「お笑いサークル連盟」「大学芸会」「NOROSHI」「学生R-1」などを中心に形成された大学横断型の学生芸人コミュニティを指す[1]。
定義
- 広義
- 大学の落語研究会、寄席演芸研究会、喜劇研究会、お笑いサークル、学園祭ライブ、学生漫才大会など、大学を拠点にした学生の演芸活動全般。
- 狭義
- 2010年代以降に「お笑いサークル連盟」「大学芸会」「NOROSHI」などを中心に形成された、漫才・コント・ピン・大喜利を含む学生芸人コミュニティ。QJWebの大学お笑い出身テレビマンによるコラムでは、「大学お笑い」という言葉が学生間で使われ出したのは、2011年に『大学芸会』が生まれたころとされている[1]。
歴史
系譜A:落語研究会・寄席演芸研究会の時代
大学お笑いの前史として重要なのが、各大学の落語研究会/寄席演芸研究会である。落語・漫才・コント・演劇的な笑いが混在し、のちの芸人・落語家・テレビ人を多く輩出した。
- 明治大学落語研究会 — 五街道雲助、三宅裕司、立川志の輔、渡辺正行、小宮孝泰ら落語家・喜劇人を多数輩出した名門[2]。
- 早稲田大学寄席演芸研究会 — 古典演芸+学生芸人文化の源流。山田邦子、オアシズらを輩出したとされる[3]。
- 同志社大学喜劇研究会 — 1962年創設の老舗。カズレーザー、東ブクロが同会でコンビを組んだことで知られる[3]。
- 大阪芸術大学落語研究会 — 関西漫才系の重要例。ミルクボーイが大学時代に出会った場[4]。
この時代の特徴は、「お笑いサークル」という言葉よりも、落研・寄席研・喜劇研が中心だったことである。現代の大学お笑いが「漫才・コント・ピン・大喜利」を横断するのに対し、前史では落語や寄席演芸が強い母体だった[3]。
系譜B:1990年代後半〜2000年代前半、早稲田発の現代型サークル
WAGE
1990年代半ばのお笑いサークル創世期に、早稲田大学のWAGEが登場した。QJWebでは、WAGEを「お笑いサークルからそのままプロへという道を辿った先駆的存在」と位置づけている。メンバーには小島よしお、岩崎う大、槙尾ユウスケ、森ハヤシ、手賀沼ジュンらがいる[5]。
早稲田大学お笑い工房LUDO
早稲田大学お笑い工房LUDOは1998年設立。早稲田大学公式サークル紹介でも設立年は1998年、活動は月1回のライブ、週2回の部会・ネタ見せ、演者だけでなく映像・照明・音響スタッフも含む体制と説明されている[6]。
QJWebはLUDOについて、1998年設立で、ハナコ岡部、ひょっこりはん、にゃんこスター・アンゴラ村長らを主な出身者として挙げている[7]。
この時期の重要性は、大学のお笑いが「落研中心」から、ライブ制作・ネタ見せ・大会出場・映像/音響スタッフも含む総合的な学生お笑いサークルへ移行していく点にある[6]。
系譜C:2005年前後、大学横断大会の前史
2011年の大学芸会以前にも、大学横断の大会は存在した。QJWebの大学お笑い黎明期座談会では、2005年から「大学お笑い日本一決定戦」が始まり、マヂカルラブリー村上が法政大学HOS時代に優勝した大会として語られている[8]。
ミルクボーイは大阪芸術大学時代、2006年に早稲田大学主催の「大学生M-1グランプリ」で優勝した[4]。
この時期は、統一的な大学お笑い界というより、早稲田・法政・大阪芸大・関東ローカル大会などが点在していた時代と見るのが自然である。
系譜D:2011年、大学芸会による制度化
現代大学お笑いの転換点は、2011年の大学芸会開始である。大学芸会公式サイトは、「国民的大学生芸人グランプリ〜大学芸会〜」を、お笑いサークル連盟が企画・運営する大会と説明し、2011年夏に第1回を開催、現在は学生を対象としたお笑いイベントとして日本最大規模であるとしている[9]。
ここで重要なのは、大学お笑いが単なる各大学の部活・サークル活動ではなく、全国規模の個人戦・賞レース型イベントとして制度化された点である。
| 役割 | 内容 |
|---|---|
| 個人戦の最高峰 | 学生芸人個人・コンビ・ユニットが競う |
| 大学横断の可視化 | 早稲田、慶應、上智、明治、法政、東大、日大、一橋などが同じ土俵に立つ |
| プロ進出の前段階 | NSC・事務所所属前に実力を試す場になる |
| 現代大学お笑いの共通言語化 | 「大学お笑い」という言葉・文化圏の成立に寄与 |
系譜E:2015年、NOROSHIによる団体戦化
大学芸会実行委員会は、2015年に「NOROSHI presented by 大学芸会」を立ち上げた。公式サイトでは、NOROSHIを「全国イチ面白いサークルを決めるお笑い団体戦」と説明している[10]。
NOROSHIは、漫才・コント・ピンの3種目でチームを編成する団体戦イベントである。2023年開催告知では、「全国イチ面白い大学お笑いサークルを決める大会」「漫才・コント・ピンの3種目でチームを編成する団体戦形式」と説明されている[11]。
| 大会 | 性格 | 競技形式 |
|---|---|---|
| 大学芸会 | 個人戦・コンビ戦寄り | 学生芸人No.1 |
| NOROSHI | 団体戦・サークル戦 | 漫才・コント・ピンの総合力 |
| 学生R-1 | ピン芸人戦 | 学生ピン芸人No.1 |
学生R-1についても、大学芸会公式サイトは11・12月に開催される学生ピン芸人の大会として紹介している[10]。
系譜F:2010年代後半〜2020年代、プロお笑いへの供給源化
2010年代後半以降、大学お笑いはプロお笑い界の明確な供給源になった。特に、M-1グランプリ・キングオブコント・R-1グランプリ・NHK新人お笑い大賞・ABCお笑いグランプリなどで、大学お笑い出身者が可視化された。
テレビ朝日『お笑い実力刃』大学お笑いサークルSPでは、ラランドと令和ロマンがゲスト出演し、早稲田LUDOのOBであるハナコ岡部、ひょっこりはん、ラパルフェも取り上げられた[12]。
東洋経済の記事も、M-1グランプリ2023で令和ロマンが優勝したことをきっかけに、M-1、R-1、キングオブコントで大学お笑い出身者の存在感が高まっていると分析している[13]。
主要サークル
| 大学・団体 | 設立・特徴 | 主な関連芸人・人物 |
|---|---|---|
| 早稲田大学お笑い工房LUDO | 1998年設立。大規模お笑いサークル[6] | ハナコ岡部、ひょっこりはん、アンゴラ村長、ラパルフェ、Gパンパンダなど[7] |
| WAGE(早稲田) | 1990年代半ばの創世期サークル[5] | 小島よしお、かもめんたる、森ハヤシ、手賀沼ジュン |
| 慶應義塾大学お笑い道場O-keis | 2006年6月設立。慶應公認学生団体[14] | 真空ジェシカ、ストレッチーズ、令和ロマンなど |
| 上智大学お笑いサークルSCS | ラランドを輩出[15] | ラランド |
| 法政大学お笑いサークルHOS | マヂカルラブリー村上が所属[16] | マヂカルラブリー村上 |
| 一橋大学お笑いサークルIOK | 多摩・中央線系学生芸人の拠点 | さすらいラビー中田[17] |
| 青山学院大学ナショグルお笑い愛好会 | さすらいラビー宇野の出身系統 | さすらいラビー宇野[18] |
| 明治大学お笑いサークル木曜会Z | 2020年代の大会上位常連 | 大学芸会2025優勝者ぶびなど[19] |
| 同志社大学喜劇研究会 | 1962年創設の老舗。関西大学お笑いの重要拠点[3] | カズレーザー、東ブクロ |
| 大阪芸術大学落語研究会 | 関西漫才系の前史[4] | ミルクボーイ |
| 日本大学経商法落語研究会 | NOROSHI上位常連 | ナイチンゲールダンス、チーム消防車など[20] |
| 筑波大学お笑い集団DONPAPA | 2020年代後半の新興有力サークル | NOROSHI2026優勝「チーム絵本作家」[21] |
プロ芸人への接続例
| 芸人・コンビ | 大学お笑い上の系譜 | 補足 |
|---|---|---|
| 小島よしお | 早稲田WAGE | WAGEメンバーとしてプロ活動へ[5] |
| かもめんたる | 早稲田WAGE | 岩崎う大・槙尾ユウスケがWAGE所属 |
| ハナコ岡部 | 早稲田LUDO | LUDO出身として紹介[7] |
| にゃんこスター・アンゴラ村長 | 早稲田LUDO | LUDO出身として紹介[7] |
| ラパルフェ | 早稲田LUDO | NOROSHI2017優勝例として紹介[11] |
| 真空ジェシカ | 慶應O-keis系 | O-keis出身として文脈化される[22] |
| ストレッチーズ | 慶應O-keis系 | 慶應卒、大学お笑い文脈で言及[23] |
| 令和ロマン | 慶應O-keis | O-keisの先輩後輩で結成[24] |
| ラランド | 上智SCS | 2014年にSCSで結成、NOROSHI優勝[15] |
| さすらいラビー | 一橋IOK/青学ナショグル | 中田はIOK、宇野は青学系[17][18] |
| マヂカルラブリー村上 | 法政HOS | 法政公式がHOS所属を明記[25] |
| ミルクボーイ | 大阪芸術大学落語研究会 | 大学祭で漫才、大学生M-1優勝[4] |
大会・メディア・インフラの系譜
| 年代 | 出来事 | 意味 |
|---|---|---|
| 1960年代 | 早稲田寄席演芸研究会、同志社喜劇研究会など老舗団体 | 落研・寄席研・喜劇研の前史[3] |
| 1990年代半ば | 早稲田WAGE | 現代型お笑いサークルからプロへ進む先駆[5] |
| 1998年 | 早稲田LUDO設立 | 大規模お笑いサークルの代表例[6] |
| 2005年 | 大学お笑い日本一決定戦 | 大学横断大会の前史[8] |
| 2006年 | 慶應O-keis設立 | 慶應系大学お笑いの拠点化[14] |
| 2010〜2017年 | 『学生HEROES!』などテレビ露出 | 学生芸人のメディア化[26] |
| 2011年 | 大学芸会開始 | 現代大学お笑いの制度化[9] |
| 2013年前後 | わらいのゼミナール | 学生芸人紹介・コミュニティ化[27] |
| 2015年 | NOROSHI開始 | サークル団体戦の成立[10] |
| 2018〜2020年 | ハナコ、ミルクボーイ、マヂカルラブリー、ラランドなどの可視化 | 大学お笑い出身者が賞レース・テレビで注目[26] |
| 2023年 | 令和ロマンがM-1優勝 | 大学お笑い出身の存在感が一気に一般化[13] |
| 2024〜2026年 | 大学芸会・NOROSHI・学生R-1の継続拡大 | 大学お笑いが恒常的な若手発掘インフラに[28] |
大学お笑いを構成する文化
大学お笑いは単なる「学生版のお笑い」ではなく、以下の要素が重なった独自文化である[29]。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| ネタ見せ文化 | サークル内で定期的にネタを見せ合う |
| ライブ制作文化 | 学内ライブ、対決ライブ、自主ライブを学生自身が企画・制作 |
| 大会文化 | 大学芸会、NOROSHI、学生R-1、M-1、KOC、R-1などに挑戦 |
| インカレ文化 | 他大学生も所属できるサークルや合同ライブが多い |
| 早慶・関東圏中心性 | 初期は関東の有力サークルが中心 |
| 関西・地方の拡大 | 同志社喜劇研究会、大阪芸大落研、近畿大学こども帝国、東北大学GYUTAN、筑波DONPAPAなどが可視化 |
| メディア化 | テレビ、Podcast、GERA、YouTube、雑誌、Webメディアで扱われる |
| プロ前教育機関化 | NSCや事務所所属前の実戦経験の場になる |
加筆・整備が望まれる関連項目
個別記事化すると本項の補完になる項目:
- 大学芸会 歴代決勝・優勝者一覧
- NOROSHI 歴代決勝・優勝サークル一覧
- 学生R-1 歴代決勝・優勝者一覧
- 早稲田LUDO系譜/慶應O-keis系譜/上智SCS系譜/法政HOS系譜
- 同志社喜劇研究会・大阪芸大落研・近畿大学こども帝国など関西系譜
- 地方大学お笑い:東北大学GYUTAN、筑波DONPAPA、創価大落研、日本大学経商法落研など
- 大学お笑いとM-1グランプリ
- 大学お笑いとGERA・Podcast・YouTube文化
- 大学お笑いとNSC/養成所の違い
脚注
- ↑ 1.0 1.1 大学お笑い出身テレビマンが考える、メディアにおける「大学お笑い」, QJWeb クイック・ジャパン ウェブ, 参照日: 2026-05-02.
- ↑ OB一覧, 明治大学落語研究会, 参照日: 2026-05-02.
- ↑ 3.0 3.1 3.2 3.3 3.4 大学お笑いサークルと大学クイズサークル, てれびのスキマ(note), 参照日: 2026-05-02.
- ↑ 4.0 4.1 4.2 4.3 完全にミルクボーイやがな!, 大阪芸術大学, 参照日: 2026-05-02.
- ↑ 5.0 5.1 5.2 5.3 岩崎う大「いつ世に出られるんだ」小島よしおがすぐ売れて, QJWeb クイック・ジャパン ウェブ, 参照日: 2026-05-02.
- ↑ 6.0 6.1 6.2 6.3 Waseda Circle Search: お笑い工房 LUDO, 早稲田大学, 参照日: 2026-05-02.
- ↑ 7.0 7.1 7.2 7.3 「早稲田大学お笑い工房LUDO」は、なぜ多くの人気芸人を輩出したのか, QJWeb クイック・ジャパン ウェブ, 参照日: 2026-05-02.
- ↑ 8.0 8.1 マヂラブ村上、テレ東P、テレ朝Dらが振り返る大学お笑い黎明期, QJWeb クイック・ジャパン ウェブ, 参照日: 2026-05-02.
- ↑ 9.0 9.1 大学芸会, daigakugeikai2023 公式, 参照日: 2026-05-02.
- ↑ 10.0 10.1 10.2 大会について, 大学芸会2024, 参照日: 2026-05-02.
- ↑ 11.0 11.1 日本一のお笑いサークルが決まる!NOROSHI2023開催決定, PR TIMES, 参照日: 2026-05-02.
- ↑ "大学お笑いサークル"を徹底解剖!ラランド・サーヤの学生時代, テレ朝POST, 参照日: 2026-05-02.
- ↑ 13.0 13.1 令和ロマンで話題「大学お笑い」勢いを増す背景, 東洋経済オンライン, 参照日: 2026-05-02.
- ↑ 14.0 14.1 ABOUT, 慶應義塾公認学生団体お笑い道場O-keis, 参照日: 2026-05-02.
- ↑ 15.0 15.1 ラランド「今は振り返れない」快進撃の始まった初舞台, logirl(note), 参照日: 2026-05-02.
- ↑ お笑いサークル現役生と一緒に、マヂカルラブリー・村上さん, 法政大学, 参照日: 2026-05-02.
- ↑ 17.0 17.1 さすらいラビー, 太田プロダクション, 参照日: 2026-05-02.
- ↑ 18.0 18.1 さすらいラビー×ママタルト大学お笑い対談, QJWeb クイック・ジャパン ウェブ, 参照日: 2026-05-02.
- ↑ 大学芸会個人戦2025 決勝戦結果, X (大学芸会公式), 参照日: 2026-05-02.
- ↑ 大学芸会実行委員会NOROSHI チーム消防車が頂点, 日本大学新聞ONLINE, 参照日: 2026-05-02.
- ↑ NOROSHI2026 決勝戦 結果速報, X (NOROSHI公式), 参照日: 2026-05-02.
- ↑ 慶應、早稲田、明治のお笑いサークル出身芸人が集う、同窓会, お笑いナタリー, 参照日: 2026-05-02.
- ↑ ストレッチーズ, 太田プロダクション, 参照日: 2026-05-02.
- ↑ 令和ロマンのプロフィール, お笑いナタリー, 参照日: 2026-05-02.
- ↑ 自分の心に正直に生きる(芸人 マヂカルラブリー村上さん), 法政大学, 参照日: 2026-05-02.
- ↑ 26.0 26.1 元学生芸人たち。大学お笑いサークル出身3組の座談会, BRUTUS.jp, 参照日: 2026-05-02.
- ↑ わらいのゼミナール, WonderNotes, 参照日: 2026-05-02.
- ↑ 大学芸会2024, daigakugeikai2024, 参照日: 2026-05-02.
- ↑ 上智、青学、明治、法政、東大の「お笑いサークル」代表座談会, 週プレNEWS, 参照日: 2026-05-02.
関連項目
- 大学芸会
- NOROSHI
- 早稲田大学お笑い工房LUDO
- 慶應義塾大学お笑い道場O-keis
- 上智大学お笑いサークルSCS
- 法政大学お笑いサークルHOS
- 一橋大学お笑いサークルIOK
- 明治大学落語研究会
- 同志社大学喜劇研究会
- 大阪芸術大学落語研究会
- M-1グランプリ
- キングオブコント
- R-1グランプリ
- NSC